Netflixドラマ「エイリアニスト」レビュー【19世紀精神科医】
(C)2018 PARAMOUNT TELEVISION AND TNT ORIGINALS, INC.
Netflix エイリアニスト 詳細
「エイリアニスト」 アメリカ 2018年 シーズン1 全10話 各話50分程度
出演:ダニエル・ブリュール, ルーク・エヴァンス, ダコタ・ファニング, ブライアン・ジェラティ, ロバート・ウィズダム, ダグラス・スミス, マシュー・シアー, クオリアンカ・キルチャー, マット・リンツ
エイリアニスト あらすじ
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ケイレブ・カーの小説『エイリアニスト―精神科医』を原作とするドラマ。舞台は1896年アメリカ・ニューヨーク。警察本部長セオドア・ルーズベルトは、警察の上の人間はニューヨークの上流階級の人間との癒着が強くまともな捜査ができなかったため、少年男娼の連続殺人事件の解決に犯罪心理学者のドクター・ラズロー・クライズラー(ダニエル・ブリュール)と、挿入画家のジョン・ムーア(ルーク・エヴァンス)に極秘に捜査を依頼する。当時ニューヨーク警察発の女職員で本部長の秘書のサラ・ハワード(ダコタ・ファニング)と双子の部長刑事マーカス(ダグラス・スミス)、ルシアス(マシュー・シアー)・アイザックソン兄弟と共に捜査を開始する。
エイリアニスト 19世紀末 アメリカという時代背景
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19世紀末のアメリカと言っても日本人としてはなかなかピンとこないが、例えば偉人で言えばトーマス・エジソン、キューリー夫人、ウィルヘルム・レントゲンなどが活躍した時代である。作中にもJP・モルガンなど実在の人物も登場する。この時代のアメリカでは男尊女卑はもちろん、人種差別も根強い。ちなみにリンカーンの奴隷解放宣言が1863年。本作の冒頭に”19世紀精神病患者は人間の本質を失っていると考えられた”とあるように、精神病患者に対する理解は皆無といっていいほどの時代である。心理学はまだ確立されておらず、1985年にフロイトがヒステリーの原因は幼少期に受けた性的虐待の結果であるという論文を書き、ユングの登場はそこから数年先になる。
例えばデヴィッド・フィンチャー「マインド・ハンター」で犯罪プロファイリングが誕生しつつある1970年代にすら、猟奇殺人など理解不能な犯罪を犯すものは先天的に「悪」として生まれてきた人間だという認識が一般的だった。その70年以上も前の時代なら言わずもがなである。
エイリアニスト キャスト
ラズロー・クライズラー(ダニエル・ブリュール)
ジョン・ムーア(ルーク・エヴァンス)
サラ・ハワード(ダコタ・ファニング)
マーカス(ダグラス・スミス)
エイリアニスト ネタバレなし 感想
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ストーリー的には比較的ゆっくりで、次々に殺されていく少年男娼の犯人を追っていく。”エイリアニスト”=精神病の研究者というタイトルではあるものの、さほど”エイリアニスト”が際立っている内容ではない。現代よりも社会的に成熟していない19世紀末のアメリカでは例えば警察と上流階級の癒着が強かったり、アメリカ先住民とヨーロッパからの移民の格差がひどかったり、男尊女卑が当たり前だったりと現代から考えると色々ありえない常識の中で猟奇殺人事件を追うという設定が面白い。冒頭で”精神病患者が人間性を失っていると考えられていた”とはいうものの普通と思われる人々の常識もかなり違うので、僕ら現代人がイメージする”人間性の欠如”とはまた違っているが、徐々に浮かび上がってくる犯人像のまさに人間性を失っているかのような不気味さはスリリングだった。人によってはエグすぎるかもしれなけれど、今よりバイオレンスな常識を持った100年前の人々をも震え上がらせるには十分なヤバさを積み上げていく過程はなかなか見物だ。とは言え割合としては歴史的面白さが大半を占め、結構強烈なスリルが2割くらいなイメージだった。
エイリアニスト 受賞とノミネート
2018年サターン賞、エミー賞、2019年にはサテライト賞、第17回視覚効果協会賞、ゴールデングローブ賞などノミネート。第70回プライムタイム・エミー賞で視覚効果賞 補助視覚効果部門を受賞。
エイリアニスト シーズン2
既にシーズン2への更新が決まっており、2019年5月より撮影も開始。2020年配信予定とアナウンスされている。