【意外に繊細さが魅力】マスターオブゼロS2
(C)2017 Universal Television LLC.
「マスターオブゼロ」原題:Master of None ネットフリックスオリジナルドラマ シーズン2
製作:アジズ・アンサリ、アラン・ヤン
監督:エリック・ウェアハイム、アジズ・アンサリ 他
製作年:2017
シーズン2まとめ
シーズン1よりもデフをはじめとしたNYに住む人々を繊細に描く部分が増えたような気がする。企画・製作総指揮・主演がアジズ・アンサリがコメディアンということもあって多くの人がコメディ色を期待して見てしまうだろうけれど、笑いというよりも人間ドラマとしての魅力のほうが大きいドラマだと思う。少し気詰まりな空気だったり、すれ違ったり、時に心を通わせてはしゃいだり。スマホやSNSを利用する現代人らしい登場人物を独特の演出で描く。ウィットに富んだ友達同士の会話も面白い。何気ない日常を淡々と描いていくがラストにはちゃんと毎シーズン山場が作ってあるのも魅力の一つ。
1.誕生日泥棒
シーズン1のラストで何故かイタリアに飛んだデフはイタリアのパスタ店で修業しているところから始まる。イタリアに来て3か月、流暢ではないながらもイタリア語を話し、イタリア生活を楽しんでいるように見えるデフ。なぜだか1話目は映像が白黒でどことなく物悲しい。ニューヨークに住むマイノリティアメリカ人の日常を描く物語と思っていたのに、イタリアに住むインド系アメリカ人の日常のドラマに変わっているくらいで、大体ノリはシーズン1と違いはないのかもしれない。ただ、1話目は導入編とだからかさほど特筆すべき点もなく、まぁ見れるかな、といったところ。
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オープニング曲 Ennio Morricone – Bruno Nicolai – Alla Luce Del Giorno – 1969
挿入曲 Mina – Più di te (I Won’t Tell)
Piero Umiliani – Luna D’Agosto 1971 (Organo Solo) – 1970
エンディング曲 Ennio Morricone – Guerra E Pace, Pollo E Brace
2.レ・ノッツェ
アーノルドがデフのもとに遊びに来るが、アーノルドのもう一つの目的は元カノの結婚式に出席することだった。アーノルドが相変わらず少しイカれてて面白いのと同時にちょっとカッコ悪いところが良い。そのかっこ悪さこそが30代独身男性に共通する不安だったり、女々しさだったりする。思ってもなかなかできないことを堂々とやってのけるとても正直なアーノルドを見ていると、それが誇張だとしても自分の中にもアーノルドのような部分があるのかもしれない、と思わずにはいられない。
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オープニング曲 DOLCE VITA RYAN PARIS (High Quality)
Change – A Lover’s Holiday (Jim Burgess Mix)
エンディング曲 Rainbow Team – Bite The Apple (12″ Disco Mix)
3.ピッグ・ワイルド
ニューヨークから戻ったデフのもとに信心深いイスラム教徒の親類がやってくる。人々の宗教感にフォーカスが当たる回。デフを通してかなりリアルな現代のイスラム教徒(特に若者)の姿が見える回だと思う。僕一応仏教だけれど、信心深くはなくて正直言えば宗教自体に意味を感じていない。でも例えば盆に墓参りをするだとか等の定期的な行事には意味はあると思っていたりする。この回で描かれるデフとデフの父親、母親の三人の宗教に対する考え方はバラバラだけど、そんな3人の宗教に対する落としどころになんだか納得。どの宗教でもみんな思うことって結構一緒なのかな、と思った。
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オープニング曲 2Pac – Only God Can Judge Me (Music Video)
挿入曲 豚を楽しむイスラム教徒のシーン(笑
Poison – “Nothin’ But A Good Time" (HQ Sound)
エンディング曲 Bobby Charles – I Must Be in a Good Place Now
4.ファーストデート
デフが出会い系サイトを使ってデートしまくる話。いろんなきっかけでデフとデートする女の子、女の子の種類、人種も様々。ファーストデートでうまくかみ合わない会話とか気まずい空気の表現がとてもリアル。伝わる人には伝わるものがあるのかもしれないけれど、僕にはあまり何も響かなかった。僕にも出会い系にハマっていた時期があったけれど。
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オーニング曲 Kraftwerk – Computer Love
エンディング曲 Sylvester – I Need Somebody To Love Tonight
5.ディナーパーティ
シェフのジェフにセレブなディナーパーティに誘われるも、うまくふさわしい相手(彼女候補)が見つからないデフはイタリアから遊びに来ていたフランチェスカを誘ってパーティへ向かう。最近では「美女と野獣」で歌っていたジョン・レジェンドがシェフのジェフの友達としてパーティに来ていて歌を披露する豪華な回。
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オープニング曲 Dorothy Ashby – Soul Vibrations
ジョンレジェンドが劇中でカバーしていた曲 Michael Jackson – Off The Wall – I Can’t Help It
エンディング曲 エンディング前はかなり大胆な演出だったけど僕は成功していると思う
Soft Cell – Say Hello, Wave Goodbye
6.ニューヨークアイラブユー
かなり異色な回だけどシーズン1もふくめ「マスターオブゼロ」の中で一番笑ったかも。全然知らない登場人物ばかり出てくるし、何この回?と思うだものの、いろんな人々がザッピング的に細かなドラマを見せてくれる。特に面白かったのは手話で話すカップルのやりとり。ちょっと耳が聞こえない世界が体験できます。面白かったのと同時に耳が聞こえないという疑似体験は少し息が詰まる。脚本的にも綺麗にまとめてくれます。個人的にはなんか賞を取るならこの回でもよかったのではないか、と思わなくはない(笑)
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オープニング曲 Little Sister – You’re the one (Pts 1 & 2) (Sly Stone production)
挿入曲 Canco Hamisi-Umugabo wukuri
劇中でダサいとディスられまくっていた曲!耳に残って仕方がない
NICK SKITZ – VENGABOYS MEGAMIX
エンディング曲 ✿ BOHANNON – “Take The Country To N.Y. City" (1981) ✿
7.ドアNo.3
テレビの上の人間に気に入られ、デフが司会をするクラッシュカップケーキが7シーズン分契約しないか、とオファーが来るも気の乗らないデフ。一方二人の恋人がいて一方を選ばなければいけないと悩むブライアンの父親、クラッシュカップケーキに嫌々出演するマジシャンを見て、デフが出した答えとは。珍しく変化のある回。
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オープニング曲 Will Powers – Adventures In Success (Dub Copy)
エンディング曲 A New Career In A New Town – David Bowie (1977) FLAC Remaster HD Video ~MetalGuruMessiah~
8.サンクスギビング ※エミー賞受賞エピソード
デフとデニースは幼馴染だったらしく、子供の頃からデフはサンクスギビングはデニースの家で祝っていた。そんな子供の頃から2017年までのデニースの家での感謝祭の模様が数年分ピックアップして描かれる。デニースがレズビアンをカミングアウトする以外特に大きなドラマもなく淡々とサンクスギビングの日ばかりが続くが、ブラックミラーで心が抉られた僕にはとても心地よく、良い気分転換になった。マスターオブゼロはいつ見ても落ち着く。大して面白くなくとも、どことなく面白いという不思議なドラマ。精神安定には最適。
9月27日追記:
このエピソードでアジズ・アンサリ(デフ役)とリナ・ウェイス(デニース役・下画像右)第69回エミー賞コメディ作品部門脚本賞を受賞。デニース役のリナ・ウェイスが脚本を書いていたのがまず驚きだったけど、このエピソードは作中のデニース同様に彼女自身もゲイであるリナ・ウェイスが自身のカミングアウト経験から膨らませてできた話なんだそう。今回の受賞で彼女はエミー賞コメディ作品部門の脚本賞を受賞する初めての黒人女性となった。
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オープニング曲 Digable Planets – Rebirth Of Slick (Cool Like Dat)
挿入曲 New Edition – Can You Stand The Rain
エンディング曲 TIME AFTER TIME – STEP BY STEP
9.アマルシ・ウン・ポ
ずっと友達だと思っていた女の子に少し気がある自分に気づくデフ。彼女は婚約し結婚予定の彼の商談のお供にNYに来たが、結婚前に本当に彼と結婚すべきか悩んでいた。彼女を商談に忙しい婚約者に変わって遊びに連れ出すデフはどんどん気持ちが彼女に傾いていく。きっと彼女も同じ気持ちのはずだ、と思うけれど現実問題を考えるとなかなか行動を起こせずにいるデフ…。
この回と次の最終回はワンセットのドラマ。なぜかこの回だけ尺がいつもの倍あって、なんだよ!なげーよと思ったので少し見ずに放置していたけど、これは1時間の尺で十分なドラマ。アジズ・アンサリは人に心の機微を表現するのが本当にうまい。間と表情で表現される、画面に映っている人の心情が伝わってくるかのような演出。やはり「マスターオブゼロ」見どころはここにあると思う。男性ならば目の前に心惹かれる美しい女性がいて、彼女ととても楽しい時間が過ごせているけれど、彼女には婚約者がいて、踏み越えられない一線がきっとどこかにあって…というデフの気持ちになって見るのをオススメしたい。恋愛を疑似体験しているかのような気分になります。
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オープニング曲 Sergio Endrigo – Canzone Per Te
挿入曲 Frankie Valli & The Four Season – You’re a Song (That I Can’t Sing)
パジャマダンスパーティの曲 Edoardo Vianello – Guarda Come Dondolo (1962)
The Walker Brothers – I Can´t Let It Happen To You
エンディング曲 Lucio Battisti – To Feel In Love
10.フオナ・ノッテ
ここまで来ればもう最終回だけ見ないなんていう人はほとんどいないと思うし、特に何も書きません。僕にとって「マスターオブゼロ」は大好きな作品の一つになりそうです。素晴らしいです。
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オープニング曲 Timmy Thomas – The Coldest Days of My Life
挿入曲 Mina – Un anno d’amore – 1964
Gigi Masin – Swallows’ Tempest
Skeeter Davis – Gonna get along without you now (HQ)
エンディング曲 Mina – Se piangi, se ridi – 1965
シーズン3はいつ?
Please Don’t Ask Aziz Ansari About Season 3 of Master of None, It Stresses Him Out
現段階で「マスターオブゼロ」シーズン3の話が全然聞こえてこないので少し調べると、アジズ・アンサリはシーズン3を考えるには少し時間が欲しいと言っているようです。今はシーズン3について聞かれるのも、考えるのもちょっとストレスがかかるよね、と話すアジズ・アンサリ。「ネットフリックスがOKをくれるなら、僕らが70歳になったころやろうか」なんて冗談(?)を交えながら、まだシーズン3については何の構想もない状態ではあるようです。このインタビューはもちろんアジズ・アンサリへのものなんですが、その場を想像するとなんかデフが答えているような、あの口調で話しているような気がしてなりません。さすがに40年も待たされると「マスターオブゼロ」自体忘れてしまうので、できれば2年くらいでなんとかシーズン3を配信してもらいたいものです。