シーズン5配信完了「ベターコールソウル」シーズン6でファイナル
「ベターコールソウル」 ネットフリックスオリジナル
原作・制作:ヴィンス・ギリガン、ピーター・グルード
出演:ボブ・オデンカーク、ジョナザン・バンクス、マイケル・マッキーン、レイ・シーホーン
ベター・コール・ソウルとは
ヴィンス・ギリガンによって制作された「ブレイキング・バッド」のスピンオフ作品である。「ブレイキング・バッド」のあらすじを端的に言うならば末期がんの宣告を受けた化学の高校教師ウォルター・ホワイトが家族にお金を残すために覚せい剤の製造に手を出し、かつての教え子と組んでドラッグ売買の世界でのし上がっていくというストーリーだが、「ベター・コール・ソウル」はその中で弁護士として違法ギリギリの手法でウォルターを助けたり、大物ドラッグディーラーをつなげたりと大きな存在感を放っていた弁護士のソウル・グッドマンと、その周りで動いていた用心棒マイクの話。彼がウォルターたちと出会う6年ほど前からシーズン1のストーリーが始まる。
「ベター・コール・ソウル」途中からはオススメしにくい
「ブレイキング・バッド」が好きだった人ならば間違いなくススメられる本作ではあるものの、それでもシーズン1から見たほうが良い。逆に「ブレイキング・バッド」を見ていない人でもシーズン1から見るのであれば問題なく楽しめると思う。ただ、シーズンを重ねるにしたがって、時系列が「ブレイキング・バッド」に近づいていくため、登場人物のクロスオーバーが多くなり、もちろん「ブレイキング・バッド」を先に見たほうが存分には楽しめる。もちろんブレイキング・バッド自体もかなりの名作なのでオススメだけど、全シーズン5であるためなかなか手が出しにくいかもしれない。それでも個人的には「ブレイキング・バッド」から見るのが一番だとは思う。
異質なヴィンス・ギリガンの手法
「ブレイキング・バッド」「ベター・コール・ソウル」の両方に当てはまる作風だと思うけれど、なかなか”ながら見”できないドラマになっている。冒頭になんの説明もなく不穏な映像が流れ、その映像についてシーズンの最後の最後まで説明がなかったり、例えば「ベター・コール・ソウル」ではマイクが何やら作業をしているが、その目的も後々になって見ないとわからない等、ちゃんと見ていると「何をしているんだろう?」と画面に食いつけるような仕組みになっているが、逆に注意深く画面を見ていないと気づけない。またそのように映像で魅せる作りになっている部分で尺を取ることもあり、ストーリー展開はとてもゆっくり進んでいく。
ベターコールソウル シーズン3各話 ネタバレなし感想
エピソード1 メイベル
(c) 2017 Sony Pictures Television Inc.
よくよく思い出すとベターコールソウルってこんな感じだったかなぁとは思う。うっかりシーズン3から見た人はたぶん次の回見ないかもしれない置いてけぼり感はあるかもしれない。まだシーズン2の最終回に残った火種に大した変化もなく話が全然進まないというとてもマイペースな回。新シーズンのしょっぱなくらい多少飛ばしめのペースで話を進めてほしかった。
「ブレイキング・バッド」しかり、「ベター・コール・ソウル」しかり、最大のウリは人間ドラマ。それにしてもシーズン2のラストを結構盛り上げといて、シーズン3の第一回ではまるで何もなかったような演出とか…ヴィンス・ギリガンの演出は相変わらず異色。ドSなのか、よっぽど自信があるのか、はたまたもうネタがあんまりなくて、1シーズンでは尺があまるとか…(さすがにこれはないとは思うけど)初回としても心配になるほど遅い展開の一話目だったと思う。
ベターコールソウル シーズン3 エピソード2 目撃者
(c) 2017 Sony Pictures Television Inc.
エピソード1のちっちとも話が進まないイライラ感のままエピソード2も続いていくのだけれど、本エピソードでは何も動きがないという事自体がどんどん不気味さに変わっていく。ジミーもマイクも同時に不気味な何かに触ろうとする回。もちろん、この二人は全くやり方が違うけれど彼らがどう動くか、どうなるかは両者共次回に持ち越しで次回が気になって仕方がない展開になっている。ドラマ展開の緩急のつけ方も監督の狙い通りなんだろうなぁ、と思わされた。2話目にして「ドラマに求めるものはこれだ!」といえる次への期待感が十分にある。
ベターコールソウル シーズン3 エピソード3 乗りかかった船
勘が良い人なら途中でマイクが何をやっているのか察しがつくかもしれないけれど、黙々と仕事をするマイクが何をやっているか一切説明はない。それでも最後まで見てるとあぁ、なるほどねと誰もが納得するはず。どの段階でわかってもスッキリするけれど、特にマイクのシーンは結構真剣に見ないと面白さが伝わってこないかもしれない。真剣に視聴するのが前提になってしまうけど、おじいちゃんの一人芝居でこれだけ魅せるドラマってのもなかなか珍しいかもしれない。前述のように「ベターコールソウル」ながら見厳禁、と言いたい。もちろん一方でジミーのパートも面白い。ストーリーはジミーのほうが動きますが、僕はマイクのシーンがよかった回だと思った。
ベターコールソウル シーズン3 エピソード4 サブロシート
別につまらなくはないが特に面白かったわけでもない。いつも以上に物語が動かない仕込みの回。キムとジミーが何かを企てているようだけど、視聴者視点で見えるのは今回のラストシーンの絵が印象的に撮られているな、ということくらい。二人が何をしようとしているのか現段階ではわからないようになっているのだと思う。シーズン3のエピソード1から2という「落として↓上げる↑」という演出を経験しているからこそ、今回はさほど面白くなくてもむしろ次回への期待が高まる。そんな演のシーズン3のエピソード1が今回のような中だるみのための布石だとしたらヴィンスさんは天才すぎる。つまらない回の後には面白い回が来るという経験は話の中だるみには非常に効果的だと思うけど…さすがにそこまでは空想が過ぎるか。
ベターコールソウル シーズン3 エピソード5 まやかし
かなり熱い回。今回はジミーvsチャック(兄)の州法曹協会の聴聞会での直接対決。前回からひそかに何かを企んでいたキムとジミーですが、今回もひたすら秘密主義。視聴者に作戦は全く教えてくれないが、勘の良い視聴者のためのヒントはちゃんと用意してある。そのヒントからジミーがどういう結論に導こうとしているのかはうすうす分かるかもしれない。でもどうやってその結論まで持っていくのか?キムからも揺さぶりをかけながらもやはり弁の立つチャック。一体どうやって勝つというんだ!ジミー大丈夫なのかよ!ともうハラハラ。弁護士ドラマっぽい舌戦と読みあいが素晴らしい回。予想どおりエピソード4でトーンダウンさせておいてからの素晴らしいエピソード5。今回全くマイクの出番はありませんが、おかげでやっとジミーが主役っぽくなってきた。
ベターコールソウル シーズン3 エピソード6 別の名前で
前回がある意味山場だったこともあり、今回は展開も控えめ。どちらに転んでも苦い結末を迎えそうだったジミーとチャックとの確執は一端終息し、予想に反して後日談はただただ淡々と流れていった。今回マイクはほとんど登場せず、恐らくマイク側の話になるであろうヘクターサラマンカとナチョの動きにフォーカスが当たった。マイク側にも動きはなく、一端の区切りを迎えた関わらずジミー側のドラマにも次の展開への期待感が弱かったように思えた。実際あと何が起こるんだろう?方向感がなくなったおかげで期待感は多少薄れた感がある。またベターコールソウルもシーズン3で完結するのか、段々とブレイキング・バッドへ続いていくであろうシーンが増え始めた。もう1シーズンくらいくらい続いてほしいけれど、シーズン3で完結するほうがドラマとしては美しいような気もしてくる。なんにしても、もう一つくらい大きなドラマを経てシーズン3を終えてほしい。
ベターコールソウル シーズン3 エピソード7 やり繰り
さすがにシーズン3の中盤を過ぎて新展開はないが、チャールズとの対決の後疲弊した感のあるジミーとキム。二人とも淡々と仕事をする中に不安がにじむ。今回はジミーもマイクもここまでのエピソードで見せなかった表情を見せる。特にマイクにはちょっと目を疑った。いや、ここで僕は目を疑ってしまったことがもうヴィンス・ギリガンの術中にハマっていたんだと思う。シーズン3の演出は特に心理的にうまく誘導されている気がしてならない。こんなに見事に監督の想像どおりの感情を僕は抱いているんだろうか。今回の伏線はとてもテクニカルでまるでペテンにでもかけられたようだった。ただの深読みとも思えないほどヴィンス・ギリガンの裏の狙いが見え隠れする回。
ベターコールソウル シーズン3 エピソード8 転倒
もはやベターコールソウルでいうならば、むしろ通常回と呼ぶべきかもしれない特に何も起きない回。次回以降気になることと言えばナチョの計画がどうなるのか、ってことくらい。ちょっと何も起きない回が続いているのでそろそろ一山ドラマが欲しいところ。というかマイクが何をやっていたのか今回は最後までわからなかった。冒頭の序盤のマイクは何をしていたのかサッパリわからなかった。
ベターコールソウル シーズン3 エピソード9 転落
タイトルからして転落なのでもう嫌な予感しかしない。タイトルのせいなのか、今回がそうなのか、タイトルのせいでそう見えてしまうのか、どの登場人物の周りにも何やら暗雲が立ち込めるような展開。ブレイキング・バッドをシーズン5まで見ていれば6年後ソウル・グッドマンとして法律事務所を開いているジミーを取り巻く環境とベターコールソウルのシーズン1のジミーは随分違って見えていたはずだけど、ここへきて随分そのギャップが埋まってきたと感じるんじゃないだろうか。確かに当初はジミーがどうやってソウル・グッドマンになっていったかが気になるドラマだったけれど、ここまでジミーを知ってしまうとオオオチになるであろうジミーのその転機はなんだかもう見たくない。いや、見たいんだけどね…。嫌な予感しかしないもんだから…。物語のテンションとしては少し戻ってきたかな、というエピソード9だった。
ベターコールソウル シーズン3 最終回 灯り
今回のシーズンで起こったことの顛末が淡々とエピローグのように描かれる。ブレイキング・バッドにつながっていくのでもちろん話が進めば進むほどハッピーなエピソードはなくなっていくのは予想がつくけれど、今回はすべてが暗い。今回のシーズンの間に起きた事件で取り返しがつかなくなってしまった色んなことをじっくりとカメラが追っていき、やっぱりいつものようにあまり展開はない。でもベターコールソウルらしいシーズンの終わりだったと思う。今シーズンすべて見ていた人にとってはこの最終回はとても重いエピソードに感じたんではないだろうか。少なくとも今僕は軽く憂鬱だ。次のシーズンもありそうな感じもあり、このまま打ち切られるパターンもありえるようなラストだった。
「ベターコールソウル」シーズン4は「ブレイキング・バッド」とクロスオーバーが多くなる?
シーズン1から冒頭に差し込まれる”現在”の(「ブレイキング・バッド」シーズン5後の)ソウル・グッドマンことジミー・マッギル。時折挟まれる”現在”彼の姿だがシーズン3まで全くその話を進める様子はなかった。だが監督はヴィンス・ギリガンである。一見意味の内容に見える映像ほど後々意味を持たせてくるという手法は「ブレイキング・バッド」はもとより本作「ソウル・グッドマン」でも健在である。シーズン3終了時にはあれ?もう大きなって伏線ないんじゃない?なんて思ったけど、いやいや、あるじゃないか。この物語は時系列的に「ブレイキング・バッド」の6年前であり、同時に「ブレイキング・バッド」終了後でもあるのだ。この大きな風呂敷を彼を使わないなんてことがあるだろうか?シーズン4はそろそろこのあたりが動き始めるんじゃないかと思う。※個人的な予想且つ妄想
ベターコールソウル シーズン4 ネタバレなし 感想
(c) 2018 Sony Pictures Television Inc.
「ブレイキング・バッド」のスピンオフ作品である「ベターコールソウル」もシーズン4ともなるとさすがにもうここから見始めてもなかなか100%楽しめないんじゃないか、という内容になりつつある。確かに「ブレイキングバッド」と時間軸が近くなることでクロスオーバーは多くなるため、ブレイキングバッドファンには嬉しいシーンも増えるが、「ベターコールソウル」から見始めた人には置いてけぼりを食らう感があるか、もしくはそれすら気づかない恐れがある。「ブレイキング・バッド」から数えると通算9シーズン目に当たる長さになってしまうのでなかなかオススメしにくいが、時間さえ許すなら未だに「ブレイキング・バッド」から見始める価値はあると思う。監督のヴィンス・ギリガン独特の手法も慣れないと退屈に感じてしまうかもしれないが、一度慣れればかなり新しい切り口を見せてくれるので画面にくぎ付けになってしまうだろう。
シーズン1では「ブレイキング・バッド」に出てくるソウル・グッドマンとジミー・マッギルがイメージ的になかなか繋がらない印象だったのがだんだんと、さらにとても強い説得力を持ってジミー・マッギルがソウル・グッドマンとして生まれ変わっていく、そんなシーズン4だったと思う。敢えて比べるならば、衝撃度は「ブレイキング・バッド」のほうが強かったかもしれないけれど、物語のクオリティはもはやただのスピンオフというレベルは超え、今では「ベター・コール・ソウル」は「ブレイキング・バッド」にも肩を並べるほどの人間ドラマになってきたのではないだろうか。エピソードは10で、これまでのシーズンと長さは変わらないにも関わらず最終回を見て「もう終わり!?」と思うくらいあっという間に感じた。当然シーズン5への更新もあるだろう。次シーズンも楽しみだ。
ベターコールソウル シーズン5 ネタバレなし 感想
「ブレイキング・バッド」の続編にあたる映画、「エル・カミーノ」が配信になる影響でシーズン4から5の間は1年以上あく形となった。展開は相変わらずスローながらもしっかりと登場人物を描いていく手法は健在で、同時にその部分こそが「ベターコールソウル」の見どころであるのは過去シーズン同様である。シーズン5ともなると見続けている人以外は見ていないと思うので、ネタバレなしで感想を書く上ではあえて特筆すべき点はないとすらいえるかもしれない。だが、だからと言ってその他シーズンと比べて劣っているというわけではなく、むしろシーズン5は過去シリーズの中で最も緊張感のある内容だったと思う。ほんの少しの欲を出したため気づくとどんどんとドラッグカルテルとの距離が近くなってしまうジミー、そんなジミーを見守るキム。視聴者としては特にキムと同じような心境でドラマを見守ることになるだろう。またシーズン4から現れたラロ・サラマンカが今回のキーマンになる。このラロがまた不気味なほど陽気で、それでいてあくまでも悪人であるということが伝わってくる立ち居振る舞いがシーズン5をより刺激的なものにしている。最終シーズンであるシーズン6はどういう結末を迎えるのか。
シーズン5を見終えた今も、「ブレイキングバッド」に登場していなかったキャラクターたちがどうなっていってしまうのか想像もつかないし、とても気になる点でもある。