Netflixドラマ「ユニークライフ」レビュー【自閉症コメディ】【シーズン3】
(C) 2017 Sony Pictures Television.
- 1. 彼女を作ろうとがんばる自閉症の男の子とその家族のドラマ「ユニークライフ」
- 2. 「ユニークライフ」あらすじ
- 3. 「ユニークライフ」のメインテーマである自閉スペクトラム障害とは
- 4. 「ユニークライフ」主人公サムが持つ自閉スペクトラム障害の特徴
- 5. 「ユニークライフ」の特徴1 自閉症ギャグが面白い
- 6. 「ユニークライフ」の特徴2 障害を抱えるサムを支えるのが当たり前になっている家族を描く
- 7. 「ユニークライフ」の特徴3 ボーイッシュなケーシーがとても素敵
- 8. 「Dude, nobody is normal」
- 9. 「ユニークライフ」 シーズン1 ネタバレなし感想
- 10. 「ユニークライフ」 シーズン2 ネタバレなし感想
- 11. 「ユニークライフ」 シーズン3 ネタバレなし感想
彼女を作ろうとがんばる自閉症の男の子とその家族のドラマ「ユニークライフ」
邦題「ユニークライフ」 洋題「Atypical」 2017年 ネットフリックスオリジナルシリーズ
原作・制作:ロビア・ラシード
出演:ジェニファー・ジェイソン・リー、キーア・ギルクリスト、マイケル・ラパポート
ブリジット・ランディ=ペイン、エイミー・オクダ、ジェナ・ボイド、グレアム・ロジャース、ニック・ドダニ
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「ユニークライフ」あらすじ
自閉症スペクトラム障害を抱える18歳のサムはカウンセラーのジュリアにデートする女の子を探してみてはどうか、と勧められる。サムは自分には”彼女を作る”ことは出来なさそうだと話すが、「勇気を出して踏み出すの」というジュリアの言葉を鵜呑みにして、友人のザイードや妹、時には両親の協力を得ながら、至って真面目にデートできる女の子を捜し始めるサム。自閉症スペクトラムを抱える故、多くの普通のことが「困難」だったり、独自の「普通」を持っているサムにとって”彼女を作る”ということは新たな挑戦であり、また同時に彼を支える家族にとっても新たな挑戦であるのだった。
(C) 2017 Sony Pictures Television.
「ユニークライフ」のメインテーマである自閉スペクトラム障害とは
自閉症スペクトラム(ASD)とは発達障害の1つで、先天的な脳機能障害である。いわゆる自閉症やアスペルガー症候群(AS)もこのカテゴリの中に含まれる。ASDは”Autism Spectrum Disorder (Disability)” の略で、日本語では自閉症スペクトラムと訳される。以前はは広汎性発達障害と呼ばれ、自閉症、スペルガー症候群 (AS)、特定不能の広汎性発達障害など細かなカテゴリー分けがあったそうだけど、現在ではそれらを全てまとめて自閉症スペクトラムと呼ぶらしい。サムが作中でカウンセリングを受ける形で自身の障害について解説するのでさほど予備知識は必要ないかもしれないが、知らない人は謎が多くなると思うので少し予備知識を書いておこうと思う。
(C) 2017 Sony Pictures Television.
「ユニークライフ」主人公サムが持つ自閉スペクトラム障害の特徴
アスペルガー症候群とは、知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないものである。なお、高機能自閉症やアスペルガー症候群は、広汎性発達障害に分類されるものである。
出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
言葉の発達の遅れはなさそうなのでサムは自閉症スペクトラムの中でもアスペルガー症候群だと思われる。…と断言してみたが、素人なので間違ってたらごめんなさい。今回調べてみてわかったのだけど、アスペルガー症候群という症状は自閉スペクトラムというカテゴリーの中に含まれるそうだ。その特徴は大きく三つある。
- コミニュケーションの障害
会話の裏側や行間を読むのが苦手。明確な言葉がないと言葉をそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向があり、人の言葉を勘違いしやすい。また逆には遠まわしな表現をすることが難しく、よくも悪くも発言がストレートになりやすい。 - 対人関係の障害
場の空気を読むことが難しく、相手の気持ちを理解したり寄り添ったりするような言動が苦手で対人関係をうまく構築するとこが難しい。自分の言動がほかの人にどう影響するか想像するのが苦手で、何も考えずに思ったまま発言してしまうため相手を傷つけてしまうことがある。また場にそぐわない発言や回答をしてしまうため、自己中心な人物に思われてしまう。 - 限定された物事へのこだわり、興味
一旦興味を持つと過剰と言われるほど熱中する。法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどこだわりを見せることがある。またその法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向がある。サムで言えば、相手の興味の有無を気にせずにやたらと南極大陸やペンギンの話をしたり、ルールが好きだったり、といった部分が当たると思われる。
それ以外にも新しいことになれるのが苦手だとか、ソフトに触られることが苦手だったり色々苦手なことが多いサム。上記の特徴の中でも「正直に思ったまま口にする」という部分が結構面白く切り取られていて、笑える場面も多い。もしかしたら障害という部分を笑うのが不謹慎だと言う人もいるかもしれないけれど、僕は差別や偏見は笑いにできて初めて無くなると思っているので”自閉症ギャグ”はむしろ笑って良いシーンだと思っています(友達の影響もあるけど)。というより、そもそも”自閉症ギャグ”は「ユニークライフ」のコンセプトの一つだと思う。
「ユニークライフ」の特徴1 自閉症ギャグが面白い
自閉症の特徴の一つの”場にそぐわない発言や回答”というのは障害と言ってしまえば障害かもしれないが、コントだったらまさに笑いどころである。そんな自閉症の特徴を活かした(?)ギャグを積極的に取り入れているのは障害を障害としてだけ捉えるのではなく、”笑えるじゃん”って普通に思うことも大事じゃね?みたいなメッセージなんじゃないだろうか。
(C) 2017 Sony Pictures Television.
「ユニークライフ」の特徴2 障害を抱えるサムを支えるのが当たり前になっている家族を描く
彼女を作りたいと言い出したサムについて、母親のエルザは日常生活すら大変なのにガールフレンドなんてまだ早いと反対するが、父親のダグは子離れすべきだと言う。月の予定表がポストイットでびっしり埋まるほど献身的にサムの世話をしているエルザ、サムとの接し方がわからずにいる父親のダグ。常にサムを中心に動く両親に憎まれ口は叩いても、ちゃんと協力するケーシー。結構な頻度で問題を起こしてしまうサムをなんとか支えてきた家族が抱える葛藤が、だんだんとほころび始める。回を重ねるごとに我慢してきたこと、気づけば我慢していることすらわからなくなっていること、家族のこれまでの様々な苦労が見えてくる。
(C) 2017 Sony Pictures Television.
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「ユニークライフ」の特徴3 ボーイッシュなケーシーがとても素敵
ぶっきらぼうでボーイッシュ、でもとても優しい妹ケーシーをブリジット・ランディ=ペインが演じる。ケーシーはサムくらいストレートな物言いで、いじめに怒る正義感の強いを性格。センス8の「ノミ・マークス」役ジェイミー・クレイトンによく似ている美人。小さなころからサムの面倒を見ていることもあって、サムの世話をしてあげることが当たり前で、何よりも先にサムのことを心配してしまうおかん属性がとても健気。さらに、サムとのやり取りはジャイアン気味というツンデレっぷり。文句なしでかわいいキャラクターです。陸上が得意。
(C) 2017 Sony Pictures Television.
「Dude, nobody is normal」
「僕も普通ならよかったのに」と嘆くサムにエヴァンがサラっという一言「普通のやつなんていないさ」。この一言だけでエヴァン(左)がいいやつなんだろうなぁ、とわかる。軽い慰めみたいな雰囲気でサラッとエエこというやんけ、エヴァン。
(C) 2017 Sony Pictures Television.
「ユニークライフ」 シーズン1 ネタバレなし感想
(C) 2017 Sony Pictures Television.
サムを中心に家族が右往左往し、その結果家族の中に様々な葛藤が生まれていく。図式としては障害を持つ子供がいる少し特殊な家庭のファミリードラマだけれど、家族間に起こる感情の問題はどこの家庭でも起こりうるような事柄だったりするため、自閉症にまつわる部分ばかりではなく、普通のファミリードラマとしても十分楽しめるようになっていると思う。サムが最終回直前に抱えた問題はシーズン1のラストには一旦解決したように見えるけれど、それ以外の火種はちゃんと用意されているので、製作側としてはシーズン2もやる気満々のようだ。※2018年9月13日シーズン2配信
「ユニークライフ」 シーズン2 ネタバレなし感想
(C) 2018 Sony Pictures Television.
自閉症のサムはできないこと、受け入れられないことがとても多くてそれらが生活の上で障害になって…という部分をフォローする家族のドラマがシーズン1では大きな見どころだったと思うが、シーズン2まで来るとサムの”できること”がドンドン増えているのが見て取れ、妙にうれしい気持ちになったりする。僕は自閉症という症状をほとんど知らず、このドラマを通して知ることになったわけだけど、治療法はなくとも改善はすると言われている自閉スペクトラム障害を持つサムがどんな感じで改善していくのかという部分がシーズン2の見どころと言えるかもしれない。シーズン1から変わらないツンデレケイシーやちょっと変わったペイジ、サムの周りの優しい人々のドラマも前シーズン同様に見ていて微笑ましい。慣れもあるかもしれないけれど、シーズン2のほうがシーズン1よりも自閉症ギャグがさえていたような気もする。よくよく見るとこの手の笑いはビックバンセオリーのシェルドンの面白さに通じるものがあると思う。自閉症という言葉がついてくるとなんだか笑ってはいけないような気がしてしまうけれど、この自閉スペクトラム障害にまっすぐに向き合った内容のこのドラマだからこそ笑ってもいいんだと思える。笑いものにされる、と笑いと取る、のでは意味が大きく違ってくると思うけれど、障害をネタにして笑いを取れるくらいその障害について世間の認知が高まったら、きっとより住みやすい世の中になるんではないだろうか。
例えば最近見ないけれどこの二人とかめちゃくちゃ面白いと思うのだけれど。
障害をネタにした芸人はネットでよく賛否両論になるようだ。個人的には上記まとめの中の一言「一人で見たら笑えるけど周りに誰かいたら笑えねえわ」。これが現状の全てな気もする。もちろん、障害をひとくくりにして論じることがまずアウトかもしれないし、何を言っても不謹慎と言われるかもしれないけれどやはりまず知らないことには理解すらできないので、どんな”不謹慎”な事柄であれ面白い方法で広まっていくのがやはり良いと思う。とは言えそんな小難しいことを考えなくともユニークライフは笑えるように作ってあると思うので、ちょっと風変わりなコメディを探している人にはぜひオススメしたいドラマである。
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「ユニークライフ」 シーズン3 ネタバレなし感想
シーズン3ではサムは大学へ進学。今シーズンではシーズン1から考えると明らかに成長の見られるサム自身の問題よりも、周りを取り巻く人間の物語が多くなる。優しい人たちばかりに囲まれて生きていたサムだけれど、そんな優しい人たちにも別れや悲しみもあるし怒ることだってある。そんな彼らに起きるドラマもここまででキャラ立ちがしっかりしているので違和感なくおもしろい。構成的にもサムが大学で学んでいる授業の本質的な内容とサムの周りの人々の物語がシンクロしていたり、ここまでの色々なしがらみのせいで結果として同じ境遇に陥った人たちがうまれたりして、シーズン1、2よりも自閉症にフォーカスをあてたストーリーが減った分普通のドラマ的な面白さが増えている。両親のダグ、エルサ、妹のケイシー、親友のザイード、ペイジなどサムにとって主要な登場人物の色々な出来事がうまく絡んでいて、それぞれの境遇を想像しながら見ると色々な角度から物事を考えるような面白さがあるはずだ。同時に安定の自閉症ギャグをちょこちょこと入れながら、サムの自閉症ゆえの愛すべき点を描くのも忘れない。冒頭の食いつきこそよくないものの、結果として笑えてホロリと泣ける一番好きなシーズンだった。