DARK TOURIST「世界の”現実”旅行」
(C)2018 Netflix Studios, LLC and Netflix Global, LLC
世界”現実”旅行ではニュージーランド人ジャーナリスト・デヴィッド・ファリアがDark tourism(ダークツーリズム)と呼ばれる災害被災跡地、戦争跡地など、人類の死や悲しみを対象にした観光をレポートしていく番組。
DARK TOURIST 「世界の"現実"旅行」
Dark tourism ダークツーリズム
ダークツーリズム(英語: Dark tourism)とは、災害被災跡地、戦争跡地など、人類の死や悲しみを対象にした観光のこと。
番組中で”追悼旅行”と翻訳されるDark tourという言葉は日本ではなじみがないが、例えば東日本大震災の津波跡に行ってみたいだとか、富士の樹海に行ってみたいだとか(この二つはデヴィッドも行っている)そんな方向性の旅行のこと。ある意味悪趣味で、ある意味不謹慎なような気もするが、同時に興味深いのも否定できない。視聴前はなんか暗そう、エグそうと思ったが、デヴィッド・ファリアの好奇心と良心、ビビりっぷりが内容をマイルドにしていて不快な気持ちにはならず、ヤバい地域のヤバい文化や事柄をサラっと味見できるような内容になっている。エグい映像も出てくるには出てくるがカメラが焦点を合わせないようにしたり工夫はしているので(比較的)安心だと思う。
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紹介される地域と内容
各エピソードの冒頭でも軽く紹介されるが、、視聴前どんな内容なのかさっぱりわからなかったので、主な内容を箇条書きにしてみた。
エピソード1 ラテンアメリカ
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- ドラマ「ナルコス」のシーズン1、2で登場したメキシコ・メデジン出身の悪名高い麻薬王パブロ・エスコバルの地元の実際の評判とパブロツアー
- メキシコからアメリカへの国境超えツアー
- 死者の日と新興宗教サンタ・ムエルテ(メキシコ)
ラテンアメリカとはいうものの、そのほとんどがメキシコ絡み。メデジンはドラマ「ナルコス」の舞台だし、サンタ・ムエルテは「ブレイキングバッド」で双子の殺し屋が祈っているシーンがあったのを思い出す。それらが実在しているというのは理解していたものの、ドキュメンタリーとして実際の話や現状の話を聞くのはとても新鮮だ。
エピソード2 日本
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- 東日本大震災、放射能汚染、立ち入り禁止区域(福島)
- 自殺スポット富士の樹海(静岡)
- 軍艦島(長崎)
- 変なホテル(愛知)
ダークツーリストが日本を目指すのならば間違いなくまず福島に行くだろう。報道はすっかり収まってしまったけれど、外国から来たデヴィッドやその他観光客から見た今の福島の現状がわかる。そもそも放射能関連のニュースは日本国内よりも外国のほうが大量に流れていたのだけれど、それすらも日本人は知らない。もしかすると福島の放射能のことを良く知っているのは日本人よりも外国人のほうが多いかもしれない。多分、これを見ると多くの日本人は驚くと思う。
エピソード3 アメリカ
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- シリアルキラー ジェフリー・ダーマーツアー(ミルウォーキー)
- ヴァンパイア探し(ニューオーリンズ)
- JFK暗殺ツアー(テキサス)
シリアルキラーも有名になればなるほど必ずと言っていいほどファンがつく。危険な人物に惹かれる心理とは何か、そのあたりもデイヴィッドが軽く追っていく。またダラスではJFK暗殺を巡る2大ツアーに参加し、実在するか眉唾もののヴァンパイアと食事をすることに。
エピソード4 中央アジア
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- 世界最多の核爆弾実験地域の現在(カザフスタン ポリゴン)
- 元ソビエト最高機密施設で300トンのロケット発射ツアー(カザフスタン バイコヌール)
- 独裁者の国(タルクメニスタン)
カザフスタンでは福島に続き放射能ネタでデイヴィッドはビビりながらも放射能汚染のひどい地域を見て回る。またこの回はタルクメニスタンがすごい。名前も聞いたことがないようなこの国は北朝鮮ばりの独裁者が仕切っているらしく、デイヴィッドはスポーツ記者として入国することでなかなか見ることのできない独裁者の国の様子をリポートしていく。
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エピソード5 ヨーロッパ
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- 戦争フェスティバルで戦争体験(イギリス パドックウッド)
- 200年前の刑務所を使った犯罪博物館(イギリス リトルディーン)
- トルコ軍が立ち入りを禁じたゴーストシティ(キプロス島 ファマグスタ)
ヨーロッパで流行っているという戦争フェスティバルで戦争ゴッコはアリなのかナシなのか微妙な気持ちになりながら実際の銃や戦車を使ったロールプレイに参加するデイヴィッド。リトルディーンでは犯罪博物館のオーナーには英国最悪の囚人チャールズ・ブロンソンを紹介してもらい電話をしたり、キプロス島では禁じられた街へ潜入しようと画策する。
エピソード6 東南アジア
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- 金さえ払えばロケットランチャーで牛を撃てる!?(カンボジア プノンペン)
- 軍の力が未だ色濃い自称民主主義国家(ミャンマー ネピドー)
- 独特の死のとらえ方と葬式のトラジャ族(インドネシア トラジャ)
金さえ払えば大筋なんでもできるというカンボジアという国で本当に金を払えばロケットランチャーやマシンガンで牛を殺すことができるのか試す。その後ミャンマーの首都を見て回り、インドネシアのトラジャ族に混ざってミイラを清める儀式に参加する。
エピソード7 アフリカ
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- 生きた鳥を生贄にするブードゥー教(ベナン共和国 ウィダー)
- 拳銃で武装したツアーガイドと行くゲットーツアー(南アフリカ ヨハネスブルグ)
- アフリカーナ過激派とアパルトヘイト時代の文化を残す街(南アフリカ オラリア)
名前は聞いたことはあるものの、実際どんな宗教なのかよくわからないブードゥー教。デイヴィッドはブードゥー教の祭りに参加しその司祭の弟子になることでブードゥー教への理解を深めようとする。南アフリカでは危険と言われているヨハネスブルクのゲットー地区を自転車で観光し、いつか黒人の暴動に襲われるという予言を信じ常にそのために備えているスイドランダーの生活に触れる。
エピソード8 アメリカ
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- カルト教祖チャールズ・マンソン(カリフォルニア)
- 世界滅亡に備える人々(ケンタッキー ウイリアムズタウン)
- 拷問を受けるため2万4千人が予約待ちのマッケイミー屋敷(テネシー サマータウン)
カルト宗教の教祖と言われているチャールズ・マンソンの文通友達、世界は滅亡すると信じてその日のために準備を続ける人々、また2万4000人もの人数が予約待ちをするという拷問ショーのマッケイミー屋敷をリポートする。中央アジアやアフリカなら情報も少ないし、納得できるフシもあるけれどアメリカにもこんな人たちがいるのは驚きだ。聖書でノアの箱舟が登場するような世界滅亡を本気で信じているのも(もちろんしないわけではないだろうけれど)ある意味怖かった。
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変わった旅行に興味がある人、好奇心の強い人向けの旅番組
字に起こしたところで全く知らない国の話は見てみる以外にない。逆に聞いたこともないような内容のほうが人間という生き物の多様性が見れて面白いかもしれない。本当に色々な考え方や文化を持った人々が出てくるが、それぞれに”自分たちがおかしいとは思っていない”だろうこともまた興味深い。同じ人間と言えど世界にはきっと分かり合えない人々もいるんだろうなぁ、と思わざるを得ない。
デヴィッド・ファリアはジャーナリストとして体当たりで取材していくかと思えば、トライするものの「ああ、ダメだこりゃ、全然自分向いてナイっす」とすぐ諦めたり、動物が殺されるシーンなんかでは普通に目をそらしてしまうような男なので、全体的にあくまで”怖いもの見たさで旅行する”程度の攻め具合がちょうどいい。個人差はあると思うけれど例えば僕にはエグすぎず、心に刺さらなさすぎず、好奇心だけが満たされるという適度な刺激の楽しい番組だった。